「和紙を千年先へ。」(前篇) 和紙文化を未来につなぐ

(公財)安部榮四郎記念館 学芸員 安部己図枝

 

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平成28年6月11日(土)~25日(水)ニューヨーク ブルックリンオッサムギャラリーにて

和紙で結ぶ地域交流と国際交流実行委員 主催「和紙と書道展」が開催されました。

この企画では和紙製品・和紙の工芸品、島根県内の小中学生と島根書道会の書道作品が

展示されます。

その「和紙と書道展」で、解説・ワークショップを担当する、

安部榮四郎記念館 学芸員の安部己図枝さんに今回の「和紙と書道展」、

そして今後の和紙生産業界についてインタビューを行いました。

 

 

 

Q.この度のニューヨークブルックリンオッサム画廊での

  「和紙と書道展」について教えてください。

 

A.はい、この「和紙と書道展」は

  「和紙で結ぶ地域交流と国際交流事業実行委員会(以下実行委員会)」と

  J-COLLABO ※1 が中心に県や市、山陰中央新報や島根書道会等、

  様々な方のご協力により実現いたしました。

  和紙作品は安部榮四郎、慎一郎、紀正の漉いた手漉き和紙や和紙でできた工芸品を、

  書道作品は島根県内の小中学生の書道作品や島根書道会から書道家先生の作品をお借りして

  展示する予定です。

  私はギャラリー内で、作品の開設の他に、来場のお子様を対象に、

  和紙を使った折り紙やうちわを作成するワークショップを担当致します。

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Q.来場するお客様は外国の方がほとんどですか?

 

A.お客様のほとんどはブルックリン在住の方だと思われますが 「週刊NY生活」という

  現地の在米日本人へ向けたフリーペーパーにも記事を載せて頂いたので邦人のお客様も

  来場されるかもしれません。

 

 

Q.実行委員会はどのような団体なのですか?

 

A.文化庁の「地域の核となる美術館・歴史博物館支援事業」の事業の一つで

  当館(安部榮四郎記念館)が事務局を務めています。

  今回の「和紙と書道展」以外にも、館内の標識や説明DVD等に外国語を取り入れたり、

  全国の和紙生産者に向けての大規模なアンケートを行ったりしています。

 

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Q.アンケートについて

 

A.アンケート自体は5年毎に行っているのですが、後継者不足が最も深刻な問題となっています。

  また、原材料である三椏や楮などを栽培する農家の減少や、原材料の加工を行う職人の減少も

  減少しているのが現状です。

 

 

Q.今後の和紙業界について

 

A.来年「全国手漉き和紙連合会」の全国大会が松江で開催される事が決まっていて、

  前述の全国の和紙生産者に向けたアンケートの調査結果を発表することになっています。

  これが、ひとつの問題提起になってくれればと考えています。

  というのも、和紙の良さを若い人達に伝えていくことや後継者不足の問題を解決するには

  職人個人の力では限界があり、その為、国や県のサポートが必要不可欠になるからです。

  例えば、高知県は若手の職人を一か所の漉き場に集め1年間、国の補助で勉強させたり、

  土佐和紙国際化というチームが3年に一度、版画の国際的な展覧会を行うなど、

  和紙生産者国や県がバックアップしています。

  今回のブルックリンでの展示を通じて、和紙の素晴らしさを世界に発信するだけではなく、

  職人の抱える問題がもっと知られるようになればと思っています。

 

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Q.最後に

 

A.日本の和紙の素晴らしさは、実際に手にとってみなければ分かりません。

  今回の展示会では和紙を直接触れる機会を与えてもらいました、実際の美術館では

  「触ってはいけない」のが普通なので、和紙を直に触ってその良さを感じてもらいたいです。

  また、こちらは触れることは出来ませんが、書道の素晴らしさを目で見ても感じて

  もらいたいです、当日はブルックリン在住の書道家先生の作品も展示されるそうです。

  安部榮四郎は私に「1000年先の自分の紙を見てみたい」と言い残しました。

  この言葉を守っていく為にも、私たちはこの日本和紙の文化どのようにして、

  後世に受け継いでいかなければならないか、それを日本全体で考える必要があるのではないか

  と思うのです。

 

※1 J-COLLABO (ジェイ・コラボ)

   ウェブサイト「J-COLLABO. ORG」を軸とし、日本に関わるアート、パフォーマンス、

   イベントなどを新しいデザイン力・感覚でアメリカ社会に「日本」のプロデュースしている

   NPO法人。

 

 

 今回、前編では安部さんからは渡米する前の意気込みや和紙業界の抱える課題などを

 お話し頂きました。

 次回の後編では、NYのオッサム画廊での「和紙と書道展」の感想等をお聞き致します。

 

 

 

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 (公財)安部榮四郎記念館

 住 所  島根県松江市八雲東岩坂1754

 電 話  0852-54-1745

 営業時間 9:00~17:00 (入館は16:30まで)

 定休日  火曜日(火曜日が祝日の場合は翌日)年末年始